ときめきメモリアル(前)

 「恋愛シミュレーションゲーム」。ゲーム雑誌によれば、このソフトはそういうジャンルに入る。
 けど、現実の恋愛自体が、ほとんどゲームみたいなものやよね。押したり引いたり、ほのめかしに謎めかし、あいまいさをキープしながらの誠実さを振りかざし、気を引く目線に無関心の仕草といった具合に。和歌集の中にも、ヨーロッパ中世の宮廷恋愛指南書の中にも、同じような恋愛ゲームが読み取れます。いやいや、鳥や魚の交尾に至るまでのプロセスかて、ゲームに見えます。要するに駆け引きやね。
「本物の恋愛は純粋なもんや。ゲームや駆け引きと違うぞ」と言うなかれ。本物であると思っているものであればあるほど、相手の本気さや誠実さを確認したいがために、私たちはそうしたプロセス、そうした方法を取るものやし、それが当然必要でもあります。せやかてその「本物の恋愛」には、あなたの命を賭けるのやもの。やみくもに突進するのは、美しくとも蛮勇です。
 とすれば、「恋愛シミュレーションゲーム」とは、「恋愛ゲームのシミュレーションゲーム」である。現実のゲームをゲームでシミュレートするということ。
 なんや、ややこしい話。

1995/12/06



ときめきメモリアル(後)

 アッシーくんやメッシーくん。もはや死語やろうけど、状況は今も変わらない。オジサンには、情けない近ごろの若い男かも。でも、オジサンだってデートしたとき食事代とかは、必ず自分が払ってたりしてませんでした?
 「男たるもの、割りカンなどできない」って。それって元祖メッシーくん。せやから実態は何も変わってない。変わったのはオジサンの時代には男がリードしているように見えていて、現在は女がリードしているように見える点。
 この僅かのズレを生じさせている幾つかの素因の中から、ごっつう分かり易いのを二つ。一つは、男余り。オスはメスより弱いので幼児期の死亡率が高く、元々女より男の方が多く生まれるようになっているのですが、医学の進歩によって幼児の死亡率がどんどん下がってしまったため。となると資本主義のこの国では需要と供給の関係で、女の価値が高くなる。もう一つは、恋愛がゲームなのがテレビドラマを含めたメディアによってあからさまになったこと。ゲームなら有利に進めた方がいいのに決まってますから、需要の高い女が堂々とリードできるようになったのね。
 ということをかなり正確にシミュレートしているのがこのソフト。ただし現実と違って、メッシーくんの男にも確実に恋愛を成就させてくれます。ありがたい。合掌。

1995/12/13