思議のダンジョン2 風来のシレン(前)

 ちょうど一年前、このコーナーで最初に取り上げた、「不思議のダンジョン・トルネコの大冒険」のパート2です。
 前作は、制作者の中村光一が以前参加していた「ドラゴンクエスト」シリーズから、トルネコってキャラを借りて、出てくるモンスターも武器や防具やアイテムも「ドラゴンクエスト」のプレイヤーにはおなじみのものを使用していたわけですが、今回はオリジナルとなっています。一度負けるとそれまでの努力は全部パーだとか、プレイするたびにダンジョンの形が違うだとかの設定は同じですから、オリジナル云々は関係ないようですが、前作の場合やはり、出来がどうかは知らずともドラクエファンであるだけで買ってくれた層が確実にいたに違いなく、今回の場合それを期待できない、つまりこのゲーム自身のオリジナリティが勝負なわけやね。具体的なセールスがどうかは今のところまだよく分からないのですが、中古ショップで観察するかぎり、前作と同じく値段の落ち込みは少ない。
 私の場合は、前作の方がおもしろいと思ったんやね(と言いつつ、すでに二百五十回以上もプレイしていて、自慢すれば、六回目に最初のダンジョンをクリアしたのだ)。けど、「前作のほうがおもしろい」と思ってしまうその訳がやはりおもしろいのが、さすがのソフトであり、また、前作より不利な条件を承知の上でおもしろくしようとした工夫の様がまたおもしろくもある。ややこしい話やけど、そうなんです。
 「やはり」を三度繰り返せば、やはり中村光一はすごい!

1996/04/10

不思議のダンジョン2 風来のシレン(後)

 前作のほうがおもしろいと思うのは、そっちのほうがシンプルやから。冒険好きの商売人トルネコが、奥さんのネネに薦められてダンジョンを冒険する。ただそれだけやから、繰り返しプレイしても、飽きようがない。今回の場合、設定がかなり複雑なんですね。風来のシレン(股旅さんです)がやって来て、まだ誰も究めたことがない、「こばみ谷」に挑戦する。最初にたどり着いた村には実は弟だと分かるペケジってのがいる。また旅の途次では、おリュウさんや座頭さんに出会う。何度かプレイすると彼らは仲間になるし、彼らのアイデンティティも分かってくる。その他にもさまざまな村で、シレンは様々に人々の人生にも立ち会う。
 要するにフツーのロープレ世界が、今回はかなり付与されているわけ。それはそれで楽しいけれど、一回で飽きてしまうのです。コテコテな説明をすれば、ご飯やパンには飽きないけど、ピラフやアンパンには飽きるってことです。かなり値段の高いソフトに於いて、物語を描くとき、この飽きるってのがかなり大変な事実であるのがよく分かり、それを分からせてくれるのが中村光一の力。たぶん彼はそのことを熟知しているはずです。
 にもかかわらず、そうした一度で飽きてしまう設定を、この「千回プレイできる!」をウリにしているソフトにあえて投入する覚悟には並々ならぬものがあり、そのための工夫はすごい。まあ、とにかくプレイしてみて下さいな。最初のダンジョンはマトモやけれど、その後に現れる数々のダンジョンの設定は笑えますから。笑ったついでに夢中でプレイしてしまえますから。やはり、中村光一はすごい!

1996/04/17