スーパーマリオ64(前)

 一昨年発売された三二ビットのゲーム機、「プレイステーション」と「サターン」。最初、大丈夫かいなって動きやったけど、一年ほどたった去年の暮れ頃から両者ともハードの値下げとともに、いいソフトの釣瓶打ちとなり、それまで一人勝ちやったスーパーファミコンの牙城を揺るがすどころか、このコーナーに掲載されているトップ10に一目瞭然なように、それを放逐するほどの勢い。前者は全世界で五百万台、後者は国内で三百万台を突破したとのことです。
 そこに登場したのが任天堂の新しいハード。その名も「ニンテンドウ64」。三二ビット機なんぞこのハードのための露払いとばかりに、一六ビットからいきなりの六四ビット。任天堂は、私のワープロでも「にんてんどう」と打って変換すれば一発で任天堂となるほど、すごい会社なのだが、そこの六四ビット機の名前が「ニンテンドウ64」というのは分かりやすい。分かりやすすぎる。それも全世界共通なのだという。ちょっと怖いくらいの自信やね。
 ハードと同時発売のソフトは三本。その中で最も注目されたのが、これ。
 当然でしょう。マリオは日本が世界に誇る最も有名なキャラやから。マリオは、今回このハードの性能を、プレイヤーに知らしめる役割を担っています。
「わざわざ土星(サターン)や遊び場(プレイステーション)に行かんでも、これまで通り天に任せておけばええのやな」と思ってもらう使命やね。
 本当に頑張れるのか、マリオ?

1996/07/31


スーパーマリオ64(後)

 今回のハードはコントローラーの独自性が際立ちます。グリップの中央に「3Dステイック」なる棒があり、これを左手の親指で三六〇度グリグリ自由に動かす。つまりアナログ操作ができる。
 アクションゲームのマリオの場合やと、上下左右はそのままマリオが動く方向と対応していて、そのスティックを倒す角度によってマリオの動くスピードが変化するという、分かりやすいもの。
 ところが画面はポリゴンなのでどうしても揺らぎがあり、スティック操作によるマリオの動作と私たちの日常感覚にある動作が微妙にズレている。例えば真っすぐ走らせてるつもりでも少しだけ斜めに走る。そのために、橋から落っこちてゲームオーバーとか、モンスターを殴ったつもりが外れとかが生じる。
 けど、これを欠点とせず、ゲームのおもしろさにしてしまっているのがさすが。与えられたアクション課題そのものはそれほど難しくないので、「おっさんの、わしにもできる」と嬉しがらせて、操作が微妙に難しい。せやからムキになってしまう。そうしてしだいにスティックを媒介に、マリオとの一体感が醸成されてくる仕組み。そうなってくるともう、課題なんぞ無視して、意味もなくマリオにバック転させたり、連続ジャンプさせて喜んでいる私やった。
 ただしその揺れに慣れてしまうと、今度は日常の風景が揺らいで見えてしまうのでホドホドに。
 世代性別に関係なく楽しめるゲームの代表です。

1996/08/07