井手洋介の麻雀家族(前)

 監修責任者、東大卒の井手洋介氏は、「日本健康麻雀協会」の会長。この協会の宣言は、「マージャンは健康的な頭のスポーツです。当協会は、マージャンが三大新聞やテレビにレギュラーとして登場し、囲碁や将棋、あるいはゴルフのように社会的に認められる文化的レジャーの地位を獲得すべく、健康的なマージャンを普及、推進していくことを宣言します」。
日曜日の教育テレビで麻雀も放映して欲しいってことです。
 マニュアルには、「囲碁、将棋が社会的には認められていますが、マージャンはそれ以上の人気を持ちながら、ギャンブル的な側面ばかりが強調されてきた感があります。しかし、34種136枚のマージャン牌の組み合わせの膨大さと、4人のプレイヤーのかけひきが織り成す複雑なドラマは、まさに人生の縮図であり、もっとも奥の深いゲームだと確信しております」との一文も。
 「人生の縮図」。そこまで言うか。そこまで言いたいか。
 目頭が熱くなる。ううう。
 学生時代、井手さんのこんな情熱を知っていたら、タバコの臭いの染み付いたきったねえ雀荘で中華丼を食いながら罵詈雑言を互いに浴びせかけ、一日の食事代程度の金銭の授受を主目的とし、勝つまで止めへんぞとタダをこねる、そんな麻雀を私はしなかったであろうに。
 これは麻雀の健康健全性を伝道するソフトなのであった。

1996/05/22



井手洋介の麻雀家族(後)

 麻雀好きの家族がいて、でも七人しか揃わず、だから好条件で下宿生を求め、彼(プレイヤー)を面子に加える。
 賭けも積み込みもない、健全健康な麻雀プレイの場を成り立たせるには、家族麻雀が一番、との考えからの設定。
 ま、気持ちは分かります。というのはアーケードで登場した麻雀ゲームは脱衣物が基本やったから。パンツ一枚の最終段階まで勝つと、画面に秘密の電話番号が現れ、そこに電話すると‥‥、なんてのもありました。麻雀のオマケに脱衣があるのか、脱衣を見たいがために麻雀ゲームをするのか分からない世界。
 脱衣羽生将棋や脱衣本因坊囲碁なんてゲームはないのに、なんで麻雀だけはそんなんがあるのや、差別や! と井手氏が嘆く。
 実際私も嘆いていたのです。というのも、あるときフト気づくと麻雀仲間が周りにいなくなり、仕方なくゲームでやろうと思っても、脱衣じゃやりにくい。私はアニメやCGで描かれた裸のおねえちゃんに興味はないもんで。
 そんな時、この脱衣なしの麻雀ゲームが登場したのは有り難い。のですが、健全家族麻雀の設定であるにもかかわらず、主人公を面子に巻き込むために、好条件で下宿させるなんぞの発想をする家族は、結構不健全不健康ではなかろうか?
 その辺りで、やっぱり、麻雀は麻雀、将棋にも囲碁にもなれない。♪カモメはカモメ。やね。

1996/05/29