イデアの日(前)

タイトルに注目。「イデアの日」。つまり、理想/理念の日。いまどきタイトルに理想などと恥ずかしげもなく堂々と掲げる作品。
何考えてるんや。
なおかつ、ストーリーの設定は、超能力を持った少年が仲間を集めて、世界を滅ぼそうとしている悪者をやっつけるという、正統派。
ところが、パッケージの絵に目を向けると‥‥。
立ちションベンをしている怪しげな男。骨付きのもも肉をかじっているスモウトリ。手首に数珠をしているホディコンのネェチャン。フラスコからピンクの液体を飲んでいる化学者。頬とむこうずねにバンドエイドを貼っり、大きな口を開けてお握りを食っているセーラー服の女子中学生。杯を抱えているタヌキ。
「理想」にしては何かヘンではないか?
一方、敵モンスターの顔触れはといえば、ゲロを吐くおやじ、悪口が得意な政治家、心中が必殺技のダザイはん、ピンク色でただ「アレ」と表示されるやつ。
実はこのソフト、それまでのロールプレイイングゲームが当然のように掲げていた美しい理想や正義を、笑い飛ばしてしまおうという試み。そのために、ひとまず、堂々と「イデアの日」と名乗ってみせるわけ。
しかも、主人公たちが倒そうとする悪者のボスの名前がイデアであるとくれば当然、毒も含まれる。

1995/04/19 


イデアの日(後)
               
「イデア」の毒の一つが「きせかえ」システム。
どんなロールプレイイングゲームでも、物語が進展するにつれて敵モンスターがどんどん強くなるので、主人公たちもより強力な防具を身につける必要があるけれど、これまでのゲームでは言葉で表示されるだけだった。
「革の服」から「鉄のヨロイ」って風に。ところが「イデア」はビジュアルで表現する。従って当然のことながら、着替えのときどんな勇者も下着姿をプレイヤーの前に晒すこととなってしまう。実は下着も着替えられ、パンツより強いフンドシがあれば、男も女もフンドシに着替える必要があるわけ。
要するに正義と理想に邁進する主人公たちかて、着替えるときは私らと一緒なんや、ということをプレイヤーは常に確認することができる。「なんぼのもんじゃい」やね。
けれど、せめてゲームの中だけでも、正義の使者を演じてみたいプレイヤーにとってこのシステムは白けることも事実。しかも、「きせかえ」が出来るってことは、きせかえをするプレイヤー自身の欲望(どんな服を女子中学生に着せたいかなど)の有り様も明らかにしてしまう。
笑いながらプレイできるか、ムカムカしてしまうか、そこであなた自身のイデアの質が問い直される、こわいソフトなのだ。

1995/04/26 




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