ドラゴンクエスト7エデンの戦士たち

(株)ENIX。 PS用ソフト
任天堂

2000年8月26日 価格:7800円


 五年ぶりのDQ。オープニング曲が流れ、いざ冒険の世界へ! が、あれれ、村で事件は起こらないし、フィールドにはモンスターの影もない。城内でも王様から魔王退治の依頼もない。どうやらこの国はずーっと平和で、その小さな世界の外には何もなく、ただただ大きな海が広がっているだけらしい。たった一つ、近寄ってはならないとされているのがなぞの神殿。が、実はその神殿こそ、大人達が真実から眼をそらし、封印した過去。っていうのが、だいたいの物語設定。
 ネット上にはDQZ攻略サイトが山のようにあり、一人一人が見つけ出した情報が刻一刻報告されている。DQはオンラインゲームではないが、オンラインによって、プレーヤー達がつながっているのだ。発売3日目には62時間でクリアの猛者も現れた(君、一睡もしてないやろ)! 1作目からもう14年。今の子どもにとって、ヒントを自分でメモしなければならなかったロトはもう遠い昔話。
 もっとも、ドラクエ自身はといえば驚くほど変わっていない。もちろん、今回のPS版なら、3Dでグリグリまわすことができたり、モンスターのアクションも、呪文のグラフィティも豊かだ。でも、バトルシステムや、エピソードを一つずつこなしていく物語展開や、世界観は、全くといっていいほど変わってはいない。主人公がしゃべらないのもね。
 だから、DQYから五年も待たされたプレーヤーからは、「五年待たせて、これ?」。なんて声も結構多い。
 でもドラクエが変わらない理由は、いつもその時代時代の子どものために作られているから。
 子ども時代にDQYをプレイしたあなたがもし今、DQZを面白くないと感じるなら、それは、あなたがもうDQを必要としない大人になった証拠です。

 システムなどが変わらないからといって、その物語が変わっていないわけではない。というか、ドラクエは基本を変えないことで安定した世界を作り、常に「今」の時代を切り取ろうとする。例えば前作DQYは『マトリックス』に先んじてパラレル・ワールドでの真実探しを描いていたでしょ。そして、今作では、大人たちが見ないようにしている本当の世界を、主人公(プレイする子ども)が知恵と勇気を持って行動すれば変えることができるのだと、熱く語っている。冷めちゃだめだ! と。
 例えば、過去のある村での出来事。魔物の起こりかけた悲劇を主人公たちが阻止する。ところが、現代に戻ってみると昔話となったその出来事は、村人たちの勇気で回避されたことになっている。思い出したくない過去を平気で書きかえる大人たち。そして真実が再び明らかになっても、決して見とめようとしない大人たち。村の子どもたちは決心する。自分が大人になったときは決してそんな大人にならないことを。
 このエピソードからも、ドラクエが甘い物語を展開していないことがわかる。大人社会の汚さもちゃんと伝えてる。子どもに隠したって隠せない情報化時代だからこそ、ごまかさずに描き、それでも子どもに希望を託している。
 クサイと思う人もいるだろうけど、それをまっすぐに描けるところが、DQのいいところ。
 こんなゲームはちょっとない。

 実は、この原稿書き終えるまでラスボス戦は封印していた。クリアした感動をここで書いたら、まだ終えてない人に失礼だもの。
 勇者二人とスーパースターと天地雷鳴士。準備は整っている(た、たぶん)。
 それじゃ、行ってきます!(ひこ・田中

ファミ通2000.11.03