わたしのだいすきなどうぶつは・・・


フローラ・マクダネル

こだまともこ訳 冨山房

           
         
         
         
         
         
         
     
 絵本に限らず、上製本(表紙が堅い本)には、見返しというものがついています。これは、表紙のボール紙と本文の部分をくっつけるという構造上必要な紙で、小説などのように文字中心の本の場合、色のついた多少厚めの紙を使用することが多いようです。絵本でも、同じように、厚めの紙を使うこともありますが、最近はこの見返しに絵を描くことも多く、カラーの楽しい見返しがついている本も増えてきました。絵がついているといっても、大抵の場合、模様のような絵が描かれていますが(それはそれで、楽しいのですが)、今回ご紹介する「わたしのだいすきなどうぶつは…」では、この見返し部分が大事な役割をはたしています。
 見返しをすっとばして扉(本の中に題名などが書いてあるぺージ) から中だけを読むと、主人公が、自分の好きな動物を紹介していることしかわかりませんが、実は、この見返し部分に、この少女が住んでいる農場の風景が書いてあるのです。見返しを見て、想像を膨らませてから中を読むのもよし、中を楽しんでから、見返しを見て二度楽しむのもよし、です。主人公の生活実感が伝わってきて、紹介されている動物が、より身近なものに感じられます。毎日動物達にえさをあげたり、お世話をしたり……楽しそうですね。
 この絵本は、大判で、その上おおらかな夕ッチで描かれていますから、ヒザの上で読むのもいいのですが、少し離れたところから読んでもらいながら絵を楽しむと、ますます面白さがわかるのではないでしょうか? 「わたしのだいすきないぬ」「わたしのだいすきなあひる」……とリズミカルに続く文章を耳で楽しみながら、柔らかな絵筆の夕ッチと明るい色彩の絵を目で楽しむというわけです。
 同じ時に出た続編で「わたしのだいすきなふねは…」も、手に取ってみてください。同じように、波止場の近くに住む少女が港に停泊する船をひとつひとつ紹介してくれます。港の全体図と一隻ずつの絵。そして、本文最後のべージにはお風呂におもちゃの船をうかべてご満悦の女の子が描かれています。大好きな船にのって、この子は、どこまで行くのでしょう? 本の中の登場人物と一緒に冒険したい気分になります。(米田佳代子
徳間書店 子どもの本だより「絵本っておもしろい」1996/3,4