りこうなおきさき

モーゼス・ガスター・作
光吉 夏弥・訳 太田 大八・絵 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 去年から、私たちはルーマニアという国名を度々ニュースで耳にし、大きな関心を持ってきました。この本は、そのルーマニアの、楽しく美しい昔話を十三編集めたものです。
 表題の「りこうなおきさき」は、どんな難題もスッとこなしてしまう賢い娘が主人公。王様のお妃(きさき)になり、トルコ人に肩を持った理不尽な裁判をひっくり返して、王様の怒りを買います。
 ところが、本当に利口なお妃は、素晴らしい方法でその場を収めます。このお話を聞かせると、子供たちは、ナゾ解きの連続のような話の展開のおもしろさに、とても喜びます。
 ルーマニア文化は、様々な文化を持つ民族の侵入、支配を経たこの地域の歴史を反映しています。その中に、百年以上のトルコ圧制時代があったことを踏まえると、この話を語り伝えてきた人々が「お妃」に託した願いや、圧制の中でも屈しない高い民族性を感じたりもします。
 けれども、そういうことを何も知らない小さな子供たちの方が、かえって、このお話をよく楽しんで、自分のものにしてしまうようなのです。優れた昔話は、すべての年齢の人に、それぞれに合った十分な楽しみを与えてくれます。深いところで、人間を語っているからでしょう。
 口から耳へと語り伝えられてきた宝ものを、ぜひ、声に出して読んであげて下さい。
 
(弥)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化岡田和子