幽霊の恋人たち
─サマーズ・エンド─

アン・ローレンス 作
金原瑞人 訳 佐竹 美保 絵
偕成社 1995.6

           
         
         
         
         
         
         
     
 夏の終わりに、一人の旅人がある宿屋の娘三人(ベッキー、リジー、ジェニー)と出会い、その宿屋のオーク荘で一冬を過ごすことになりました。
 一番上の娘ベッキーはこの夏に学校を卒業し、将来をどうしようかと考えている頃にこの旅人と出会うのです。不思議な旅人はたくさんの話を知っている人で、娘たちに話してくれるその話は幽霊や妖精や魔力のある者が登場します。恋人に死なれた娘が、お墓へ通ううちに恋人の霊をこの世によび戻したり、母親の霊がお嫁さんを探したりと娘を中心にしたすてきなロマンスのある話です。イギリスの昔話や民話を素材にした話もあって、娘の愛で魔力に勝ちハッピーエンドになったノロウェイの黒牛の話に似たものも出てきます。
 娘たちは次はどんな話かなと楽しみにしながら時間は過ぎ、一冬が終わり別離の時をむかえます。ベッキーは旅人に今までの話は予言ね、あれは私たちの話だったのでしょうと言い、旅人は予言はできないよ未来は自分でつくっていくものと答えています。そして最後のお話をしたあと、秋に再会することを予言して旅人はオーク荘を出発します。ベッキーもまた自分の将来をみつけるために出発しようと決心するのです。
 お話に登場する娘たちにはそれぞれの生き方があって、前向きに人生を進んでいく力をもっています。三人の娘に話すと同時に読者もその一人として聞いているのです。どう生きるかは一人一人が迷い悩んで道をみつけるのですが、恋愛もそのなかにふくまれ、ロマンスのある楽しい人生を夢みる女の子たちにとっては旅人の話はとても魅力的でしょう。(山田 千都留
読書会てつぼう:発行 1996/09/19