夢みるパナマ

ヤノッシュさく
大石一美訳 金のくわがた社 2000

           
         
         
         
         
         
         
    
 ヤーノシュといえば「おばけりんご」(福音館書店)「大人のためのグリム童話」(宝島社)の印象が強く、シニカルで一筋縄ではいかないおじさんというイメージだった。「ぼくがげんきにしてあげる」(徳間書店)にでてくる小さなくまくんととらくんのシリーズを知るまでは。本作はそのシリーズの代表作といわれている。
 川のそばの小さな家に幸せに暮らしていたとらくんとくまくん。ある日、バナナのにおいのするパナマと書いた木箱をひろったことから、夢みるパナマへの旅が始まる。釣り竿と鍋をかついで、動物たちに道案内されて、パナマ目指して進んだはずが……。
 シンプルな寓話として読む人もいるだろう。二人のおまぬけさを笑う人もいるかもしれない。でも、ページをめくるごとに、この小さな二人がとっても愛おしく見えてくるのはなぜだろう。疑わず、ただただ目の前のことに対処して進んでいく二人。自分を取り囲む大きな世界をはじめてかいま見て「きれいだねえ」とうなずきあう二人。ヤーノシュのまなざしを感じるイラストがやさしい。
 外や人にばかり夢見てうじうじしてるのは、夢見てるんじゃないんだね。自分にすねているだけかもしれないよ。(細江幸世)