ヤギのリリのおくりもの

岩崎京子:作
笠原理恵:絵 ひくまの出版

           
         
         
         
         
         
         
    
    

「こんな学校があったらいいな」と、読んだ後、思うでしょう。愛知県北部の山の中腹にある小さな小学校が、お話の舞台です。 この自然に恵まれた佐切小学校では、各学年ごとに、ウサギ、アヒル、プタ、ロバ等のいろいろな動物を飼っています。
 三年生のクラス、十人の仲間と、ヤギのリリとのかかわりを中心に、動物と身近にふれあっている学校での子供たちの成長のようすが、あたたかく、いきいきと描かれています。 動物を、人間に都合のいいペットとしてでなく、共に生活する仲間としてむかえる子供たち。リリを飼うことから起こるさまざまな問題を、たくましく解決していきます。
 リリの替え歌や壁新聞づくり。乳しぼり。はては、余った乳をむだにしないための会社つくりや乳製品のお店屋さんづくりなど次々と発展していく子供たちの行動力と、しなやかな発想に感動します。
 動物とのかかわりの中から、自然に友情もはぐくまれていく様子もほほえましく、机の上だけでは到底学べない生きた教育の原点について、考えさせられます。
 そんな彼らを、おおらかに、しんぼう強く見守る先生と父母の姿が行間から伺われて。後味のよいノンフィクションです。(け)=静岡子どもの本を読む会

テキストファイル化大塚菜生