もりのへなそうる

渡辺茂男:文
山脇百合子:絵 福音館書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 五歳のてつたくんと、三歳のみつやくんが、おべんと持って森へ探検に行く。すると、でっかいたまご(みつやくんの言い方では、たがも)がころがっている。二人は大事にたまごをかくす。つぎの日、きょうりゅうたいじをしようと、また森へ行った二人は、そこにへんなどうぶつを見つける。「ぼか、へなそうるのこどもだい」という新しい友だちとともに、おいしいものを食べ、一緒に遊ぶ……。
 ストーリーは簡潔で、幼児の世界そのものが、明るく広がっている。日本語の持つ響きの楽しさと、幼児の心の充足した遊びの世界を、温かいまなざしで描いている。ことに、言葉を獲得するころの幼い子供の様子が、へなそうるとみつやくんを通して、生き生きと描かれている。五歳のてつたくんが、きょうりゅうのように大きなへなそうるに、「おにいちゃん」と呼ばれて、妙な、でもうれしい感じを味わうように、読者である子供も、大いに笑いながら、自分の成長に自信を持つことになろう。
 絵も、実にいい。へなそうるを、本当の生きているお友だちのように感じる子供がたくさんいるのは、この絵が心にとどくからである。お話が聞ける年齢になったら、身近にいる大人が、ぜひ声に出して読んであげてほしい。その大人もまた、この本を愛さずにいられなくなるだろう。自分で読めるようになるのは一年生くらいから。
(弥)=静岡子どもの本を読む会