マザー・グースのうた


谷川俊太郎・訳
堀内誠一・絵 草思社

           
         
         
         
         
         
         
    
    
「ばらはあかい すみれはあおい おさとうはあまい そうしてきみも」
 幼い子供の口から、すらすらと楽しげに飛び出してくる詩。全部で五巻ある「マザー・グースのうた」の第一集の冒頭にある詩です。
 詩という文学の形態は、最も完成されたものとして、古くから存在していました。象徴性も高く、それぞれ母国語のとぎすまされた美と、リズムによって形づくられるべきものといえましょう。
 そのうち、子供にとって楽しく、しかも彼らの短い人生の中でも理解できる詩──子守歌・わらべ歌・遊び歌などが、それにあたるでしょう。けれども残念ながら、子供たち自身が手にとって面白い本は、そう多くありません。その中で、この詩集は、英語の韻を踏む楽しさとは違ったものになっていることは否めませんが、谷川氏の抜群の語感によって、日本の子供たちにとっても宝物になる本になっています。絵も美しく素晴らしい。
 言葉とリズムとイメージの豊かな広がりが、たっぷりと一冊の中に盛られています。必ず声に出して読んで下さいね。音になってひびく言葉の楽しさが、親子や、お友達や、先生たちとの共通の喜びになって、いつの間にか生活の中にまで、詩の世界が広がってくることでしょう。文字が読めない赤ちゃんにも読んであげたいです。
(弥)=静岡子どもの本を読む会
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