マットくんのトラックトラック

ピーター・シスさく
中川ひろたか訳 BL出版 2000

           
         
         
         
         
         
         
    
 小さな子どものための自動車絵本はたくさんあるけれど、近年まれに見るヒットは、このマットくんシリーズだ。本作は「マットくんのしょうぼうしゃ」に続く2作目。
 ピーター・シスは細かいふるえるような線画が印象深い絵本作家なのだが、こんなにかわいい、あたたかな絵も描けるんだとびっくり。息子さんのために作った絵本ときいて納得しました。
 部屋いっぱいにちらかったトラックが9台。それぞれ、はたらき方が違います。おかあさんに「かたづけなさーい」といわれて、動かしはじめるうちに、どんどんマットくんは小さくなって、トラックの運転手に。すくったり、もちあげたり、はこんだり……お仕事しているうちにおかたづけができちゃった。そのあと、お出かけすると、本物のトラックがはたらいているのに出会います。このシーンが入るだけで、絵本の世界がぐんと広がる、たのしくなる。うまいなあと思います。
 トラックにだけ黄色が使われたシンプルな画面。小さな子によりそった展開。単純でリズミカルな訳文が唄みたい。一度読んでもらえば、すっかり覚えて一人でもいっぱい遊べるね。とっても気持ちのいい絵本です。(細江幸世)