マリオネット

ガブリエル・バンサン:文・絵
ブックローン出版

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 ひとりぼっちで街を歩いていた男の子が、ふと出会った小屋掛けの、小さな舞台にいたマリオネットの坊やに心ひかれます。
 坊やも男の子を好きになったようです。「ぼくのところにおいでよ」と男の子が誘っても、坊やは困った顔をするばかり。舞台が二人を内と外に隔てているのです。そこへ恐ろしい犬が現れ、坊やがおびえ出したとき、男の子は思わず……。
 男の子とマリオネットと、人形使いの老人の心の触れ合い、小さな愛の物語が真っ白なページにコンテだけの単色で描かれています。ストーリーを語るのは文字ではなく、よぶんな背景を省き、濃淡、強弱、太く細く、コンテ特有の柔らかな筆致で、自在に描かれた登場人物たちです。
 子どもたちは、マリオネットを抱きしめる男の子に共感するでしょう。大人なら同時に、老人の屈折した表情に胸をつかれるかもしれません。作者のデビュー作『アンジュール』では、訴えかけるような犬の目が印象的でしたが、ここでも男の子の豊かな表情に、思わず目をひきつけられます。
 (和)=静岡子どもの本を読む会