魔法使いはだれだ

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作
野口絵美訳、佐竹美保絵/徳間書店・2001

           
         
         
         
         
         
         
    
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズは常に現在と未来を見据えた創作をする。これもそんな作品である。
 二年Y組の地理のワークブックにまぎれこんでいた「このクラスには魔法使いがいる」という一枚のメモから物語は始まる。魔法使いの存在はゆゆしい事件なのだ。魔法使いは審問官によって探し出されて、絞首刑や焚刑になるのである。

 当然、二年Y組でも、学校でも、誰が魔法使いなのかという詮索(せんさく)が開始される。クラスでは、これも一つのいじめの素材として魔法使いと決めつけられた少数の生徒たちが、さまざまないじめを受ける。教師たちの間でも、魔法使いさがしに積極的な人と、それに反対の立場の人に分かれ、話はじりじりと被疑者の特定に向かう。

 誰が魔法使いなのか?−−クラスメートから魔法使いといじめられる生徒がほんとうに魔法使いであるかと思うと、意外な教師までがそうだったり、次々に瞠目(どうもく)すべき事実が明らかにされて飽きることがない。

 多様な登場人物たちを、多彩な出来事に満ちた複雑なストーリーライン上で動かしながら、明快にテーマを語ることのできるこの作家の力量が十分に発揮された力作である。

 現在、冒険ファンタジー風な作品の流行現象が見られるが、こうした作品を読むと、ファンタジーの面白さとは何かを改めて考えさせられる。(神宮輝夫)
産経新聞2001.10.16