法政平和大学マラソン講座・天皇問題を考える


オリジン出版センター



           
         
         
         
         
         
         
     
 『海外紙誌に見る天皇報道』(アジア民衆法廷準備会編・凱風社・一、二号、各五五〇円)をみたとき、そうだ、これなんだ、と大喜びしてしまった。上を下への大騒ぎだった天皇の病状の急変から死去、そして葬儀までを、いったい外国のマスコミはどうとらえていたのか、これが知りたくてたまらなかったのだ。案の定、厳しい論調のものが多く、これを本にしたというのは、視点のよさもさることながら、その勇気をもたたえるべきではないか。日本の出版社も捨てたものではないなと感動してしまった。
 そして今度は、『法政平和大学マラソン講座・天皇問題を考える』(オリジン出版センター・七二〇円)がでた。これは「この際もう一度、天皇の戦争責任、それに天皇制の問題を徹底的にみんなで論議しあう場をぜひ設けよう」という意図のもとに開催された、講師二二人、なんと七時間半にわたる講座の記録である。『はだしのゲン』の中沢啓治、詩人の木島始、「原爆の図」の丸木俊、ピースボートの主催者である辻元清美、ほかに憲法学者、経済学者、物理学者、社会学者など、様々の分野の人々が様々な立場から、歯に衣着せぬ発言をしており、市議会で「天皇に戦争責任はあると思う」と発言して、「身の危険を感じる」ほどの抗議や嫌がらせを受けている長崎市長からのメッセージもある。
 この堂々たる講演記録を読みながら、日本の大学も捨てたものではないとまた感動してしまった。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1989/05/07