はじめての構造主義

橋爪大三郎

講談社


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 「構造主義」という言葉をみてこの欄をパスしようとしたあなた、これはあなたのための本です。だいたいしゃくだと思いませんか。あっちこっちで構造主義、ポスト構造主義といった言葉を耳にするけど、なんのことかさっぱりわからないというのは。どうぞ、この本を読んでみてださい。
 これは現代の思想でありながら現代人の多くにはあまり理解されていない構造主義を、高校生にもわかるように解説した本です。どんなふうにわかりやすいかというと、構造主義の親ともいうべきレヴィ・ストロースの『悲しき熱帯』という本は次のように要約されています。「未開人だ野蛮人だ、文明にとり残されて気の毒だと、偏見でものを見るのはよそうではないか。彼らは、繊細で知的な文化を呼吸する、誇り高い人びとだ……。物質生活の面では簡素かもしれないが、なかなか『理性』的な思考をする人びとなのだよ」 
作者の言葉を借りれば「理論とは、こむずかしい理屈をならべることではない。ややこしい問題にとり組む場合に、思考の手助けとなってくれるものだ。ファミコンでいえば裏ワザみたいに、教えてもらえばこりゃ便利、誰でも嬉しくなるのが当たり前である」、というわけで、そう、構造主義というのは現代を代表する最高の裏ワザだったわけです。これを知らずにほっておく手はありません。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/09/25