話すことがたくさんあるの…

ジョン・マーズデン
安藤紀子・訳
講談社

           
         
         
         
         
         
         
     
 このまえ友だちから来た手紙のなかに、ねえねえ、もしかしてヤングアダルトって、ほとんどビョーキってイミじゃないかなあ?という一行があって、思わず絶句してしまいました。そうは思いたくないけど・・・確かにそういうとこあるもんね。いまの日本では〃心身症〃がめずらしくなくて、ティーンだけじゃなく、幼児からオトナまでみたいになっちゃってて、もう視線があわないとか頭がハゲる、程度のことではだれにもかまってもらえなくなっちゃったもんね。
 心身症に関しては日本はいわば先進国、世界のトップに躍り出てしまいましたが、じゃあそのことについて書いたわかりやすい本は?というと、いまのとこ少女マンガか外国の本に頼るしかない、というのが実情です。
 『話すことがたくさんあるの…』は、両親が別れた時のゴタゴタが原因で口をきけなくなってしまった女の子が主人公です。でも、しゃべれないからって何も感じてないわけじゃないし、考えてないわけじゃない。ホントは話したいことはいっぱいあるんだよね。
 これは彼女が口をきけなかった数ヵ月間の、自分で考え、傷をいやし、再び立ち上がれるようになるまでをつづった日記です。
 いまの日本じゃ正直いってとてもとてもこんなにストレートにはいかない、ということは十分わかっているけど、でも、でも役に立つと思うんだ。だってとても基本的なことが書いてあるんだもの。ね、くじけないで! (赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1990/07/29