ふしぎをのせたアリエル号

リチャード・ケネディ
中川千尋訳・福武書店 1990

           
         
         
         
         
         
         
     
 私がこの本を知ったのは、7年くらい前のことです。静岡に住んでいた頃、図書館が主催する講演会に、よく行っていました。
 ある時、福武書店の女性の編集長の講演がありました。興味津々に行ってみると、とても魅力的でイキイキと活躍されているとわかるすてきな女性でした。・・お名前を忘れてしまった事は残念です。 その頃、ご自分が、中川千尋さんに翻訳を依頼した時の事など話され、とてもおもしろい本だという事をアピールされました。編集長の太鼓判つきでしたから、すぐにそうと信じ、このぶ厚い本を買いました。
 ぶ厚い本なので、すぐには読めず、まず、本好きの当時高校生の姪に、「おもしろいよー」なんて言って読んでもらいました。
 「おもしろかった!」という読後感を聞き、「そうか、やっぱりおもしろかったんだ」と確信し、ようやく読みはじめました。
 とても自然に、物語の中にひきこまれました。
 お母さんが亡くなって、仕立屋のお父さんは、船乗りになる事を決めました。そして、まだ赤ちゃんだったエイミ−を、人形のキャプテンとパンをいっしょにバスケットに入れ、孤児院の門のところに置いて、できるだけ早くむかえに来るつもりで、旅立ちました。 孤児院は、聖アンナ子どもの家と言いました。エイミ−は、ビル先生や、エクレア先生には助けられましたが、ニガウリ先生には、随分ひどい目にあわされてしまします。大好きなキャプテンと引き離されてしまったり、おいしいデザ−トや、休み時間や、ピクニックなど、ずいぶんとあきらめなければなりませんでした。エイミーには、いわれの無いことでした。ニガウリ先生が、あまりひどい人なので、エイミーがかわいそうでなりませんでした。
 エイミーが10才のある日、人形のキャプテンを修理しようとし、あやまって、キャプテンの頭に、プスリと釘を差してしまいます。すると、なんと不思議、キャプテンは、日々大きくなり、やがて人間になります。人形が人間にです。
 ニガウリ先生は船乗りをとてもけ嫌いしていましたから、もうキャプテンは、聖アンナ子どもの家には居られません。
 キャプテンもエイミーをむかえに来る事を約束し、逃げることになりました。キャプテンが去ったあと、エイミーは、さびしくて、さびしくて、ついには、人形になってしまいました。こんどは、人間のエイミーが、人形にです。キャプテンからの手紙を、ニガウリ先生が、やぶいて捨ててしまったのですが、エイミーは、そんな事とは知らず、ひとりぼっちで、どんなにかさびしかったことでしょう。キャプテンは、約束を守り、りっぱな大人の船乗りになってエイミ−をむかえに来ました。人形になってしまったエイミ−を連れアリエル号で、黄金の宝を探す旅にでます。
 アリエル号の乗組員は、おもちゃの動物で作ったイヌやネコ、アヒルにさるにニワトリなどなどの動物たちでした。もちろん、みんな、乗組員として、しっかりと働くことができたのです。
 アリエル号でもやはり、裏切者がいたり、海賊船イナゴ号におそわれたりと、スム−ズに航海は進まないのですが、キャプテンは命をかけてエイミ−を守りぬきます。キャプテンはエイミーのことを妹と呼んでいます。キャプテンは、エイミ−のお父さんが作った人形ですから、兄妹と言うことです。強いきずなで結ばれていました。 そして、航海の末、黄金の宝を見つける事ができたのです。それで終わってくれればよかったのですが、最後に、イナゴ号との戦いで、キャプテンは死んでしまいます。とても悲しい出来事でした。でも、エイミーは、きっと、仕立屋に戻ったお父さんと幸せに暮らしていることでしょう。この不思議な事が起こる話を、ちっとも違和感を感じる事なく、始めから終わりまで、自然な心で読む事ができました。あー「おもしろかった」。(岩井准子)
「たんぽぽ」16号1999/05/01