フリーク・ザ・マイテイ

ロッドマン・フィルブリック 作
斉藤 健一 訳 講談社 1995.7

           
         
         
         
         
         
         
     
 学習障害児で身長が二メートル近くもあるマクスウェルと、身長は七十センチくらいしかないけど天才のケビンの友情物語。マクスウェルがゲピンを肩に乗せ歩くとき、二人は「フリーク・ザ・マイテイ(勇者フリーク)」になる。
 ケビンに出会うまで、マクスウェルは友だちもいなかったし、自分の部屋に閉じこもりがちだった。だが、ケビンがマクスウェルを外へ連れ出し、マクスウェルの毎日はドキドキ、ワクワクの楽しい日々に変わった。ケビンはマクスウェルの肩の上でいろんな指示をし、空想の竜退治にでかける。危険な目に合うときもあるが、二人力を合わせて切り抜けていく。
 マクスウェルは祖父母と暮らしている。父は殺人犯で服役中、その服役の理由と父への恐れで家族の気持ちは重く塞がれている。父親に生き写しのマクスウェルは、祖父母から父親のようになるのでは、と恐れられていた。しかし、ケビンとつきあいだしてから、マクスウェルと祖父母の関係も温かいものになっていく。父親が殺人犯だということは、マクスウェルにとって重い楔(くさび)であり大きな傷だ。しかし、マクスウエルの語り口は、決して感傷的でも、重苦しいものではない。淡々と軽快なテンポで物語は進んでいく。
 一方、ケビンは体は大きくならないが内蔵は大きくなり続けているので、体が支えきれなくなりつつある。でも、自分の体はロボットの体に作りかえられるんだ、とケビンはマクスウェルに話している。ケビンは決して生きることに希望を失わない。マクスウェルとケビンの生活はやがて終わりを迎える。しかし、ケビンから多くを学んだマクスウェルは、しっかりと歩み続けていくだろう。ケビンがマクスウェルの心に残した「希望」とウイットを持ち続けて。(石川 喜子
読書会てつぼう:発行 1996/09/19