フリスビーおばさんと ニムの家ねずみ

口バー卜・オブライエン作/越智道雄訳
冨山房

           
         
         
         
         
         
         
     
 これは私の大〜好きな、お気に入リの本のなかの一冊です。
 物語としてはとても高度ってわけじゃないの。なにせ主人公がフリスビーさんという野ネズミの奥さんで、彼女のテンポで話は進みますから、とてもわかりやすく、読んであげれば三、四年生からでもわかるでしょう。
 お百姓のフィッツギボンさんが春、畑をたがやすと、フリスビーさんの冬のすまいであるブロックは壊されてしまいます。
 いつもなら大丈夫なのに今年は末っ子のティモシーが病気で、今動かしたら死んでしまう……というわけで、地下に国をつくり、電気まで引いてるニムの家ネズミを訪ねるわけですが、そのニムの家ネズミってさ、ニム、という研究所で異常に知能と寿命を発達させられたネズミたちでさ、頭が良くなったもんだから逃亡に成功したわけよ。
 で、そのあと農家から電気盗んで、地下国をつくりあげたってわけ- 。
 物語は息子の命が心配で、あえてフクロウの背中に乗って空を飛ぶ、という冒険までやってのけたおばさんの話を継糸に、このままだといずれ人間にハレる……だから文明を捨て、森の奥の谷で原始的な生活にもどろう、とする多数派と、文明なしでいまさら生きられるもんか、というカゲキ派の争いを横糸に、進んでいきます。そう、テーマの一つはエコロジー。
 これが初めての本、というだけあって、ラストはやや弱いかな、と思いますが、フリスビーおばさんて、ひかえめだけどしっかり者でとても健康的な安定感のあるネズミなのね。彼女のおかげで物語も安定感のある、安心してどっぷり浸って読める一冊になっています。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)