ぼく おかあさんのこと…

酒井駒子さく
文溪堂 本体1500円 2000

           
         
         
         
         
         
         
    

 おかあさんは忙しい。
 おかあさんはつかれる。
 おかあさんは、ときどき、つらくなる……。
 そんな時、おかあさんはこの絵本を開くだろう。なぜって、子どもが「おかあさん、キライ」という顔は、とても愛おしいから。しっかり抱きしめてもらっていない子は「キライ」っていえない。「サヨナラ」だっていえない。
 親は親というだけで、子どもに愛されてしまう難儀でステキな存在だ。でも、それが重たくなる時もある。このうさぎの子のおかあさんもそうかもしれない。日曜日、いつまでもねていて、朝ごはんも作ってくれない。せんたくだって、毎日しない……。でもね、「サヨナラ、おかあさん!」と出ていったドアのむこうをじっと見て、自分の胸に手をあてることはできる。そして「なあに?」と子どもを見つめることはできる。それで、じゅうぶんではないかしら。
 酒井駒子は前作『よるくま』(偕成社刊)で、母を恋い慕う子の心のふるえを夜の散歩に託して描いた。今回は筆跡の残る水色をバックに、子どもと親の再びの出会いを描く。
 子どもは毎日、行っては戻ってくる。親はいつか子どもが戻ってこなくなることを知っている。だからこそ、戻って再び出会えた時、このうさぎの親子のように、しっかりと抱きしめたくなるのだろう。<ほそえさちよ