バンビーノ

岡崎祥久作 理論社2000

           
         
         
         
         
         
         
     
 扉を開くと、目次の最初がいきなり「呪詛(じゅそ)」。なかなか思わせぶりな導入である。
 五年生の新学期に転校してきたトシオは、ハルニワとコウタロウという少年たちと友だちになる。トシオは、保護者とおぼしき女性のTJが、バンビーノと呼んで子ども扱いするのが気に入らない。彼はTJを、「おい」「おまえ」呼ばわりする。TJという呼び名も二人の関係も初めからミステリアス。クラス一チビなのに大人びた話しぶりのトシオと、元気のいい友だちとの軽妙な会話のやり取りはユーモラスで楽しめる。

 ジャンケンに負けて、みんなが嫌がる飼育委員にさせられたトシオは、うまく手なずけたはずの気の荒い鶏に急襲され逆に死なせてしまったり、放送委員になってドジったり。不吉な予感を内包させながらも、トシオを軸にした学校ドラマが結構リアルで愉快に読ませるのだが、トシオの家に遊びに来たハルニワたちに、TJはおれの女だといい、おれは呪(のろ)いによって子どもにさせられたと告白するあたりから物語は急転する。トシオは孤立させられ、それに気づいた校長がTJを学校に呼んだ日、隠されたランドセルを探していたトシオは、そこで呪いを解く魔道教室に引き込まれる。現実と幻想、日常と非日常の世界を巧みに入り組ませて、子どもという存在の今日的な心のドラマをしたたかに浮上させてみせる。群像新人賞作家の、子どもたちに向けた意欲作である。(野上暁)