二年間の休暇


J・ベルヌ・作
朝倉 剛・訳 太田 大八・画 福音館書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    

「十五少年漂流記」として親しまれているこの小説を作者が少年たちのために書いたのは一八八八年、ちょうど一世紀前です。そのころのヨーロッパは科学が進歩し、豊かになり、国と国との利害が難しくなった現代のわたしたちとよく似ています。作者は、その時代をきりひらくために次代への夢を少年たちにどんな形で託そうとしたのでしょうか。少し前ですがアニメの「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」がもてはやされました。人々はなぜ空想でさえあんな形で争うのでしょうか。
国籍も年齢も違う少年たちが、ふとしたことから無人島に漂着します。たくさんの困難が少年たちを待ち受け、しかも“悪い大人たち”さえ襲ってきます。冒険です。胸がわくわくする物語です。少年たちは帰ってこられるのでしょうか。
物語の筋だけでなく「自然」がみごとに描かれ、そのなかで <人間のたたかい>のドラマが展開します。……「いやそんなことはないよ、ドニファン」とブリアンは答えた。「君が帰るといってくれるまで、ぼくはこの手をはなさないよ」……ベルヌのおもいが伝わってきます。ブリアンとは実在のノーベル平和賞受賞のフランス首相の名前からとった名前だそうです。
夏休みです。完訳されたこの「二年間の休暇」を読んでみませんか。(仁)
静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化杉本恵三子