ねえ、まだつかないの?


ジェイムズ・スティーブンソン/作
やざき せつお/訳  リブリオ出版 2002

           
         
         
         
         
         
         
     
 これはね、子どもたちの本、というよりはむしろず〜っと、お父さんたちのための絵本です。絵本というか……絵本とマンガのハーフ……っていったらいいのかな。
 なにせアメリカとヨーロッパには手塚治虫がいなかったもので、マトモにストーリー・マンガがあるのは日本だけなんですよね。
 アメリカでコミックといえば、いまだに“スーパーマン”や“スパイダーマン”だといえばおわかりになると思いますが、ことマンガに関する限り、日本は世界一です。
 で、日本のコミックを読み慣れてる身には、最初はちょっととまどうかもしれませんが、絵は良いし、第一中身は最高です。
 これ以上、お父さんの気持ちを表している本も少ないでしょう。ただし主人公は犬ですけど。
 一家で海に遊びに出かけた日曜日、ラリーとハリーの男の子二人はそれこそ元気いっぱい、一瞬も黙らず、一瞬もとまらず、ただ二次元の紙面を眺めているだけのこっちですらも、ぐったりしてしまうほどの、エネルギー。車に乗ってるあいだじゅう口げんかする二人にお父さんはとうとう車をとめてしまいます。でも、怒鳴りはしないの。いいひとだなあ……。
 で、ボクたち改心したんだ、と殊勝げにいう二人に負けて、一家は静かに海に行きます。
 一日中、泳いで遊んで砂の車を作って……お父さんはまたず〜っと車の運転をして、お月さまがのぼったあとにやっとお家に帰り着きます。ぐっすり眠りこんだ二人を連れてね。
 もしも……万が一……イライラして、怒鳴りたくなったらぜひどうぞ! 鎮静剤としてお使い下さい。笑えたら……勝ちよ。(赤木かん子
テキストファイル化岩楯真理