角おれカブトの大冒険・三部作

大原興三郎・作 古味正康・絵
PHP研究所

           
         
         
         
         
         
         
    
    

親子二代にわたるカブト虫の友情と冒険の物語。第一部は、町のペット店でオスカブトの命ともいえる角を折られながらも誇りを失わず、自由を求めたおれづのが、賢く心優しいこづのとの友情に支えられ、オリから脱出するまでが描かれる。第二部「森の鉄人レース」は、一年後の夏の森が舞台。森に帰り着けなかったおれづのの遺言に従い、地にもぐり、川を泳ぎ、空を飛び続ける苛酷(かこく)なレースが催され、勇者たちが選出される。 そしていよいよ完結編「カブトの勇者町へいく」では、二代目おれづのと五匹の仲間たちが、町のペット店からまだ見ぬこづのの子供を救い出すカブト虫大救出作戦を繰り広げる。 トリックスター、インコのポリネシヤを語り手に、その白昼夢と勇者たちの冒険が同時進行するという大胆な構成と意外なストーリー展開で、子供たちをぐいぐいひきつけるはずだ。おれづのを始め、六匹のキャラクターが個性豊かで楽しい。 冒険、夢、笑い、感動。子供の本に不可欠なすべての要素にあふれ、カブト虫の世界を借りながらのファンタジーが、そのまま人間世界への熱いメッセージとなり、勇気とは、誇りとは、そして生きるということはどんなことなのかを、受け継がれていく命の貴さと共に私たちに問いかける。 作者は、「おじさんは原始人だった」の映画化などで知られる静岡市在住の作家。(T)

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テキストファイル化杉本恵三子