とどろく雷よ、私の叫びをきけ

ミルドレッド・D・テーラー・
 小野和子・訳 評論社

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 奴隷下方後七十年たったアメリカ南部のある町――。
 黒人のローガン夫妻の四人の子どもたちは、両親の愛情のもとにすくすく育っています。お母さんは小学校の先生、お父さんは出かせぎ労働者をしながら、土地の借金を返しています。彼らにとって、自分たちの土地をもつということは、白人の小作人にならずにすむということであり、人間として生きる誇りを守ることでもありました。貧しいけれど、夢があり、畑では自分たちのために綿花や野菜をつくることができました。
 しかし、彼らも家から一歩外に出れば、黒人を蔑(さげす)む白人の差別意識にぶつかります。奴隷解放から七十年もたつというのに、人間の意識は簡単には変わらないのです。そんな白人に会うたびに、多感なローガン家の子どもたちは、怒り、悲しみますが、時には知恵をしぼって、大人に気づかれないよう、白人に仕返しをしてのけます。
 人間としての誇りをもちにくい状況で、それをどうやってもちこたえたのか――。心に深くつきささる作品です。
 
(池)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山口雅子