チム・ラビットのぼうけん

アリソン・アトリー:作
石井桃子:訳 中川宗弥:絵 童心社

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 子どもの本の世界でうさぎといえば、ポターのピーター・ラビットが大スターですし、アトリーのグレー・ラビットも知られています。同じアトリーのチム・ラビットはその弟みたいな、今風にいえばかくれアイドルというところでしょうか。森でお父さんのラピットさん、お母さんのラビットおくさんと三人で暮らしています。森の小さな動物や小鳥は、みんな友達です。もっともなかには、チョッピリ意地悪な友達もいますがね。
 ある日、チムは人間が忘れていったはさみを見つけました。これは何だろう。チムはにおいをかいだり、さわったり、なめたりして、はさみがかみつかないとわかったので、家まで引きずって行きました。人間のはさみは、うさぎにとっては大ばさみです。ラビットさんは大喜び。これがあれば冬の干し草の用意がらくだし、食べ物の草を切ってくれば、寒い野原で食べなくてもすみます。なんでも切れる大ばさみ。お父さんはそれを高い棚の上にしまいました。次の日、お父さんお母さんが出掛けると、すぐチムはいすにのって、棚からはさみをおろしました。さて私たちも小さいころ、はさみが大好きでした。紙や布を切るのが楽しくて楽しくて。チムも同じでした。そうして大変なことになってしまいました・・・。
 元気うさぎチムのお話が九つ。続編「チム・ラビットのおともだち」もあります。
(和)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化上久保一志