たんと・タヌキ

ひろかわさえこ:作
あかね書房

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 これは動物行動学(エソロジー)ふうに動物を見る絵本です。エソロジーというのは、生き物を理解するために、その生き物の行動や暮らし方を観察、研究する方法をいいます。どんな物を食べ、どこで眠るか、子どもはどうやって育つか、けんかや求愛の儀式はどうなっているか、生き物の一生をたどって見ていくのです。
 子どもの本によくあるように、このシリーズでも動物は擬人化されています。でも、ふつうの擬人化とはちょっと違っています。動物たちに人間の格好をさせているのは、かわいいからではなく、人間のお話を動物の味付けでするためでもなくて、動物たちを人間と同じように大切に考えてゆく方法になっているのです。
 この本は、人間から見たらおかしな習慣も、動物たちから見ればちっともおかしくなく、それどころか、生きるために無くてはならない大事なものだと、語りかけます。人間と同じだから、あるいはいろいろ違っていても、地球の生き物たちはみんな大切なんだよ、と。それは、自分とは違った暮らし方や考え方をしている人たちを、大切にしなければならないのと同じなんだよ、と。
 シリーズにはこのほか「まるごと・カバ」「ぜんぶ・ゴリラ」「とことん・ワニ」などがあります。
(佐)=静岡子供の本を読む会
テキストファイル化上久保一志