たのしい川べ ヒキガエルの冒険

ケネス・グレーアム:著 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    

 春が来た! というところから、この話は始まります。大掃除をしていたモグラは、そわそわさせる春の気配に誘われて家を飛び出し、川のほとりへ出掛けて行きます。そして……。
 これは、その川辺にすむ動物たちを主人公にした動物ファンタジーです。そこには、あふれるほど豊かな自然と、いかにもイギリス人らしい落ち着いた暮らしがあって、動物たちは、みんな生き生きしています。
 いろんな読み方ができる作品です。副題にある通り、ヒキガエルを中心にしたユーモア冒険小説でもあるので、最初は、その道筋で読んでいくといいでしょう。
 それから、中学生以上の人たちにぜひ読んでほしいのは、物語が詩に近づいている部分なのです。
 春が来た! というのは、この物語の中では新しい世界が来た! とか、新しい夢が来た! という意味になります。花が咲き始めたり木が葉を落としたり、川が日に光ったりツバメが南へ渡っていったりすることは、みんなこの新しい世界の魔法のために、不思議な夢になります。
 ケネス・グレーアムの言葉が、川辺のすべてのものに、魔法をかけるのです。その魔法を、楽しんで下さい。小学校中学年から。
(佐)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化天川佳代子