そして永遠に瞳は笑う

堀直子

小峰書店 1998

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 幕末の長崎が舞台。
 主人公のナツは手に入れた銃で、写真館を経営する上野彦馬を撃とうと待ちかまえています。ナツの姉は家族のために遊女となったのですが、そこで恋仲となった彦馬が姉を裏切り別の女と結婚し、そのために姉が自殺。ナツはその仇をとろうというのです。
 こうして始まる物語は、「幕末」、「写真館」、「長崎」、「出島」、「異人」、「維新」、「竜馬」といった魅力的な設定で、元気少女ナツを描いていきます。

「うちは、ニューカー(自転車。ひこ注)に乗って、風のごたっ、町ば走りたかだけさ。チョクラートば飲みながら、好きなときに好きな本ば読める。自由に楽しく、女やからって、だれにも文句ばいわせん。カエみたいな女が、一人でも、この世からなくなリますようにってね。そんげん、世の中がきたら、うちは、それでよか!」
「ナツ!」
「男らは、男らのために戦うだけやろ! 自分らのためだけに!」
 ナツはニューカーにまたがった。
「自分らにつごうのよか世の中ば、作リたかためばっかりに、男らは」

 そしてやがてナツは仇のはずの上野が命をかけている「写真」という技術の惹かれ始め・・・。(ひこ・田中) 
メールマガジン 1998/05/25