しろいくまとくすのき

川島誠作

文渓堂 1997

           
         
         
         
         
         
         
         
     
 白いクマといっても、シロクマではない。両親はクロクマだったのに、突然変異で白いのだ。そのためか、それとも他に理由があったのか、白いクマは小さいときに母親を追われ、ひとりぼっちで森の中で暮らしている。話し相手は、その太い幹のうろを住家にしている大きなクスノキだけ。 
 あるとき白いクマは、クスノキの森を出て、同じ年頃のクマたちに出会うが、相手にしてもらえない。そのうち、がけから落ちそうになったイノシシの子どもを助けて仲良しになる。 
 森を襲う人間と闘うために、白いクマはそれまで疎外されていたクマたちの仲間に迎えいれられ、一時的に共闘した若いオオカミとも友達になる。 森の中では、クマとオオカミは本来は敵対している。大好きなイノシシが、見せしめのようにオオカミに食い殺され、白いクマは友だちだった若いオオカミとも闘わざるを得なくなる。 
 生きること、闘うこと、愛や差別といった複雑なテーマを、小さな子どもでも理解できるようなやさしい語り口で、作者はじつに巧妙に提示して見せる。 
 愛情も友情も破壊して、残酷に殺し合う自然界の物語が、情感を抑制した乾いた文体で展開する。それがかえって、作者の熱い思いを強烈に伝えてくれるようだ。いろいろと考えさせられる、重量感のある童話である。(野上暁)
産経新聞 1997/04/01