さよならは2Bの鉛筆

森雅裕

中央公論社 1987

           
         
         
         
         
         
         
     
 赤川次郎に秋を感じ始めた若きミステリーファンには、森雅裕の『さよならは2Bの鉛筆』!
 主人公は、横浜の音楽学院付属高等学校三年生の暁穂。ピアノ科専攻。顔とスタイルでは学内二位。いや、お嬢さん小説ではない。この暁穂、なかなかしたたかな女性なのだ。親友の朋恵のポンコツポルシェを借りてドライブしていた妊娠中の女子高生が車ごと崖から転落して死亡するという事件で、暁穂は、ポルシェに同乗していた男をさがしだし、警察につきだすまえに、ちゃっかりポルシェの車代をゆすりとるとる。第二話では、バイクに乗って、友人の恋人を殺した白バイの警官を誘いだし、高速をつっ走る。なんたって矢作俊彦のファンである。
 第三話は、ドイツ娘の祖父の死とナチ戦犯を題材にしているが、大指揮者フルトヴェングラーのシャープペンという小道具をフルに利用してのストーリーはなかなかの切れ味である。
「断じて自分自身より貧しい者を友人とするな」「チャンドラーか?」「ダグラス・ウィリアム・ジェロルド……」「すまんがね、”お嬢さん用語の基礎知識”は俺の本棚にないんだ。わかるようにしゃべってくれないか」「あら。生協で買って行けば?」
 こんな会話がバシバシでてくるのが、この本のいちばんの魅力。赤川次郎がユーモアなら、こちらはウィットで勝負。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1987/11/15