サルビルサ・@

スズキコージ/作
架空社 1996

           
         
         
         
         
         
         
     
 思いっきりわめきたい時に思いっきりむいてます、〃サルビルサ!〃。
 この絵本にでてくるのはみーんなスズキコージさんが創った、いわば〃コージ語〃-。
 だから初めてきくことば、ばっかリですが、不思議と意味はわかるんだね、これが-。
 A国とB国の兵士が砂漠のまんなかで一頭の獲物をとりあったことから、あっというまにA国とB国の大戦争になってしまう、というこの物語-。
 実際に北アフリカのどこかで、一頭の牛をめぐってあっというまに何百人の殺し合いになっちゃったってこともあるから、寓話よ、寓話、ともいってられないよね。常日頃、そういう一触即発の状態が続いてるってことが本当は問題なんだからさ。
 湾岸戦争のまっ最中に発売されたもので、そのあまりのタイミングの良さに思わずうなったリしたものです。
 ともあれ、絵本と一緒に、
「サルビルサ!」「サルビルサ!」
 とわけのわからなことを思いっきり叫んでいると一種摩詞不思議な陶酔感が得られます。
 それと同時にこういう理不尽さに対する怒りもむくむくと湧き上がってきて、よおし、こういうもんとは戦っちゃうぞ〜、みたいな気がしてくるのね。なんか、戦えるような気がしてくる、というか負けるような気がしなくなるの。気分よ、気分! なんだかんだいっても気分て大事だかんね〜。どうやったら勝てるかっていったらもう気力よ、精神力! だもんね〜。
 たまには親子で大声で叫びあうのも、と〜っても楽しいですよ。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第二版 自由国民社 1997/01/20)