クラシックの快楽

キーワード・クラシック編集部編

洋泉社


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 ジャズやロックとくらべてクラシックはいまひとつぱっとしない。重い、古い、ダサイ、というイメージが強く、音大の志願者も年々へるいっぽうだ。歌舞伎における猿之助や玉三郎のようなスターがいないのもひとつの理由だろうが、なんとなく権威的で、教育、教養のための音楽という側面がいまだに大きいのもその理由のひとつだろう。
 しかしクラシックは、ジャズやロックとはまたちがったところを大きくゆさぶる音楽なのだ、新しい耳でクラシックをききなおしてみようじゃないか、という視点で編集された入門書がでた。Bこの本は三部構成で、「作曲家を発見する」という章は、バッハからサティにいたる一四人の作曲家の紹介、次の「パフォーマンスとしてのクラシック」という章は指揮者とアーティストの紹介、最後の「クラシックの場所(トポス)」という章は、教会、宮廷、コンサート・ホール、名曲喫茶といった、クラシックと場所との関係をエッセイ風にまとめたものだ。最後の章など、ユニークな試みでおもしろいし、作曲家や指揮者の紹介もこれまでの入門書のような概説的なものではなく、それぞれが独立したエッセイとして楽しく読めるものになっている。
 「発見的リスニングにむけて」、耳をひらくのには格好の一冊といっていい。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/10/23