鏡の中の少女

スティーブン・レベンク口ン著
菊地幸子・森川那智子訳 集英社文庫

           
         
         
         
         
         
         
     
 拒食症、といったら、今の一番のテキスト、初級編は、この『鏡の中の少女』でしょう。
 長男と長女は好きな人生を送っていて、両親の頭痛のタネ……三番目のフランチェスカは従って、両親の注意を引かない、いい子です。
 ところがある時、私は〃ケサ〃よ、フランチェスカじゃない……だからケサはやせなくてはならない、というよくわけのわからない発端から彼女はやせ始め、病院にかつぎこまれるわけで、これはその摂食障害を専門にしていた一人のお医者さんが、いろいろな人のケースをミックスして一人の女の子の発症から治療の様子を物語として具体的に描いてくれたものです。
 その、私はケサよ、に始まって、ステーキを際限なく切りきざみ、口には持っていかないやり方とか、足の裏の脂肪がないので、べッドから降りると床にかかとが当たるショックが頭まて突き抜けるとか、知らない人にはカルチャーショックの連続でしょう。
 特に、入院した先にはその病院の主のような女の子がいて、フランチェスカが入院すると早速やってきて、この病院で一番重症の患者になろうとしたってそうはいかないからね、と宣戦布告するに至っては、フランチェスカでさえガク然とするのてす。
 一番重症の患者でいて、医者や看護婦の注意を引いていたいんだよね。
 この人って変……というショックがきっかけで彼女は治るきっかけをつかむのですが、文章が上手なこともあいまって、入門書としては最適だし文学としてもおもしろい本です。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)