海賊モーガンの宝島

那須正幹作関屋敏隆絵

ポプラ社 1997

           
         
         
         
         
         
         
         
         
    
 夏休みに、海の近くにある祖母の家に遊びに行った洋一は、亡くなった祖父の部屋で、一風変わった笛を見つけた。大きな船の船長をしていた祖父が、外国の船長さんにもらったというボースンズ・コールだ。洋一がその笛を吹くと、不思議なことが起こる。モーガン船長が率いる海賊の一味に加わって、素晴らしい冒険の旅が始まるのだ。 
 原色を基調にした、大胆で力強いタッチの絵で、奇想天外な冒険世界が展開する絵本、海賊モーガンシリーズの三作目。この作品では雨の日の教室で、持ち物検査があって、洋一がポケットのハンカチを探すが見つからず、かわりにボースンズ・コールが出てくる。それを吹くと、校庭の水たまりに海賊船が突然現れて、モーガン船長は昔の仲間が隠したという宝を探しに洋一を連れて行く。地図を頼りにやっと見つけた宝島には、色々なしかけがあるのだが、洋一の機転でなんとか宝のありかにたどり着いたものの、それを運びだしたところに別の海賊一味が待ち構えている。起伏に富んだ物語の展開と、細部までしっかりと描き込まれた絵の迫力で、読者は魅力的な冒険活劇の世界に引きこまれていく。海賊一味との戦いの末、やっと宝物を手にした後に、洋一が現実の世界にもどる結末もまた、なかなか気が利いていて、作者の技の冴えを感じさせる。(野上暁)
産経新聞 1997/06/10