ウル卜ラマン研究序説

サーフライダー21編

中経出版


           
         
         
         
         
         
         
     
『ウル卜ラマン研究序説』がでたとき、うれしさのあまり、会う人ごとに、面白い面白いと勧めてきたのだが、ちよっとマニアックかなと思って、この欄で扱うのは見合わせていた。ところが、テレビや雑誌で大騒ぎ、書店でもドーンと平積みになったのが飛ぶように売れているという。なるほど、「はじめに」にもあるように、「ウルトラマン・ワールドは、ピー卜ルズにも全共闘にも間に合わなかった世代にとっての最大共通言語」なのかもしれない。というわけで、胸をはって、これを取り上げることにした。
スーパーファミコン版の「ウル卜ラマン」も、凝りに凝った傑作だったが、本書も、ファンには涙がでるくらい愉快な面白本なのだ。
これは、ウル卜ラマンの世界を真面目(まじめ)に、専門的に研究しようという意図のもとに書かれたもので、執筆者のほとんどが大学の講師か助教授。というからには、もちろん、硬い話が並んでいるのだが、その硬さと対象とのミスマッチがすこぶる楽しい。
たとえば「怪獣にも『権利』はあるか」という項では、「権利の主体は人に限られる」わけではなく、企業など自然人以外のものにも認められているとして、「怪獣の権利」に関する多くの問題が提起される。地球の宇宙飛行士が異常気候の星に漂着して怪獣に変貌(へんぼう)してしまったジャミラの場合、人間よりも知能が高いバル夕ン星人の場合……などを検討した結果、「下等怪獣には『後見人』の制度の拡充を」[高等怪獣にはその『意図』の確認を」との提言が行われ、最後は「怪獣差別」への非難でしめくくられる。
その他、◎科学特捜隊の基地を日本に置くことの憲法的論議、◎ハヤ夕は、民事上、ウル卜ラマンによる損害の賠償責任を負うのか、◎「ぺス夕ー「京浜工業地帯、「ゴモラ」北浜(大阪)、「ガマクジラ」伊勢-被害総額を算出する、◎ウル卜ラマンによって倒された怪獣(宇宙人) の死体処理はだれが行うべきか、◎〃究極〃の携帯用兵器「スパイダー・ショッ卜」のエネルギー源に関する考察、など魅力的な研究(?)がめじろおしだ。
ウル卜ラマンというフィクションを題材に、専門家たちがノンフィクショナルに遊んでみせた怪作。ウル卜ラマン・ファン以外の方にも興味が持てるはずだ。(金原瑞人
朝日新聞 1992/02/02