音吉少年漂流記

春名 徹:作
旺文社

           
         
         
         
         
         
         
    
    

 江戸時代の終わりごろ、宝順丸という船があらしにあって難破し、一年以上も漂流してアメリカにまで行ってしまいます。生き残った音吉たち三人はそれから地球を一周し、四年半後にやっと日本にたどり着きます。ところが鎖国していた江戸幕府は、イギリス船に乗ってやって来た日本人を追い返してしまうのです・・・・・・。
 鎖国を続けようとする日本、開国させようとするヨーロッパやアメリカ。そのすき間に落ちてしまった、何も知らない船乗りたち。これは、大きな世界の複雑な状況の中で生きなければならなかった、有名でも偉くもない小さな人々の物語です。でも、海へ出た時十四歳の少年だった音吉が、大きく成長していった物語でもあります。
 音吉たちはとうとう日本には帰りませんでしたが、香港やマカオで、同じように漂流して来た日本人船乗りを助ける仕事を続けたのでした。
 (佐)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山本京子