お助けナブラーが、やってくる

パム・エアーズ作
灰島かり 訳
評論社 1998

           
         
         
         
         
         
         
     
 親の離婚問題で悩んでいる十歳ぐらいの子どもに特に薦めたい一冊。元気がでること間違いなし。
 ルーファスは十歳のイギリスの少年で、両親の不仲にズタズタに傷ついている。そんなルーファスの「背中をひと押し」しようとナブラーはやってくる。その日、大喧嘩のすえ、パパは行方不明。ママはひとりで泣いている。おまけに宿題はできていない。こんなひとりぼっちだったことはないとルーファスがすすり泣いていると、部屋の中に、木の香りがして、ナブラーが現われる。ナブラーは竜みたいな犬みたいな不思議な生き物で、体全体が木の葉のようなウロコのようなもので覆われていて、手の指の間には水掻きがついている。首のまわりにかけたヘッドフォンで子どもの泣き声を聞きつけると、ほっとする木の匂いをさせて助けに現われ、その子がもう大丈夫と思えるときまで、ついていてくれる。
 ナブラーの姿はルーファスにしか見えず、ルーファスが困ったときには必ず来てくれる。両親の仲が悪化し、離婚へとすすんでいくなか、ナブラーの「背中のひと押し」で、ルーファスは何度救われたことか。宿題をやっていないと先生に正直に言う勇気がもてたり、両親の喧嘩の最中にスキーにつれていってもらったり(実は未来のスキーキャンプ)、離婚が決まりかけたときには、離婚も悪くないと、離婚後の父親とルーファスの幸せそうな様子を見せてもらったりする。
 ルーファスはナブラーの世話になるばかりかというと、そうではない。「背中のひと押し」をルーファスもしているのだ。香港から転校してきたアーサーを、自分の力でマルコムのいじめから救い、アーサーと親友になる。両親の離婚を乗り越えたルーファスとの別れ際、ナブラーはこう言い残していく、「きみの中でいろんな力が、出番を待っている…なんでもやってみろよ」と。
 さて、本書は小学校中学年向きの作品にはめずらしく、離婚問題に正面から向き合っている。まず迫ってくるのは、両親の離婚に揺れる子ども、ルーファスの気持ちである。夫婦喧嘩が始まると、ルーファスがいかにおびえて、孤独であるか。それにもかかわらず、親の気持ちを思って、わざと知らないふりをするルーファス。離婚が決まると、ぼくがもっと頑張ればよかったと自分を責めるルーファス。母親と自分を捨てて出ていった父親に対する、怒りと悲しみ。父親が問題の女性をルーファスに紹介しようとしたとき、ルーファスの怒りは爆発する。
 よくとらえられているのは母親の気持ちも同じだ。仕事もうまくいかず、他の女性に心がいってしまっている夫との絶え間のないいさかい。ついに離婚を決意し、ひと息つく母親。出ていった父親にルーファスを会わせたくないと悩み、しかし憎しみを越えて前向きに決心する母親には拍手をおくりたくなる。 離婚で悩むルーファスを心配しあたたかく見守るカーマイケル先生の存在も大きい。先生は教師の鑑である。本書には離婚問題の他にいじめも取り上げられているが、この先生なら、いじめっこのマルコムにも適切に対処してくれることと思う。
 本書の作者パム・エアーズはイギリス人で、小説家というよりはテレビのパーソナリティとして有名で、作品を書き始めたきっかけも、自分のラジオ番組の中で読むような面白い話がみつからなかったからという、ユニークな人物である。
 両親の離婚問題で悩むきみたち、この本も一種のナブラーだと思うよ。きみにもできる「背中のひと押し」だってきっとある。さあ、元気をだそう!!(森恵子)
図書新聞 1999/03/13