オレゴンの旅

ラスカル/文
ルイジョス/絵 山田兼士/訳 セーラー出版 1995

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 1995年の絵本の “ベストワン!” だと私が思っているのがこれ!
 セーラー出版の『オレゴンの旅』です。
 オレゴンというのはサーカスで芸をしているくまの名前です。アメリカのオレゴン州で
捕まったからオレゴン……。オレゴン州はロッキー山脈のあるところです。
 主人公は同じサーカスの小人のピエロです。まっ白い化粧に赤い鼻、がピエロのトレードマークではありますが、彼はそのメークをとることができないのです。
 で、このピエロはくまのオレゴンと仲良しだったんですが,ある時オレゴンに,オレゴンに帰りたいから手伝ってくれないか,と頼まれて、二人でサーカスを抜け出すの
 その時サーカスはニューヨークのほうにいたんだから何千キロって旅よ。
 手持ちのお金もすぐになくなり、二人はヒッチしながら旅をするんですが、ある時乗っけてくれた黒人の運転手に、あんた、なんでメークをとらないんだい? と聞かれて、小人やるのもね、結構つらいんだよ、と答えます……そうしたら! 静かに、じゃあこの世界一大きい国で黒人やってんのは楽だと思うかい? といわれて……ピエロは、
あぁ、この人もぼくとおなじなんだ……と思うのです……
 そうやってお金やつらいことを一つずつ後ろに脱ぎ捨てて二人は広大な小麦畑を旅していきます。風に吹かれて──。これは偉大な癒しの本です。
 そうしてくまはふるさとに、ピエロは人の世にもどるのです。森に赤い鼻を残して──。(赤木かん子
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化安田夏菜