おねえちゃんは天使

ウルフスタルク/文
アンナヘグルンド/絵 菱木晃子/訳
ほるぷ出版 1997

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 男の子を描いたら天下一品の、スウェーデンのウルフスタルクのこの『おねえちゃんは天使』は、絵本の形をしていますが年齢は関係ない本です。いくつでも、わかる人はわかるし、わからない人は、わからないでしょう……。
 ウルフにはママのお腹にいた時に死んでしまったお姉ちゃんがいます。もうマリー・ルイーズという名前まであって、お父さんもお母さんも楽しみにしてたのに亡くなってしまったのですウルフがお姉ちゃんをみるようになったのはときどきママが、ぼうっと、
まるでお姉ちゃんが帰ってくるのを待ってる、といったように窓の外をみていたからかもしれません。
 子どもは……特にウルフのような子は、そういう親の気持ちを感じて、なぐさめたいと思うものだろうしもうひとつ自分ではお母さんを幸せにはできないんだ、ということも敏感に感じとってしまうでしょう。たとえ、自分では意識できなくても──。そしてそれは淋しいことです。
 両親だけでなくお姉ちゃんのことを考えて天国にはジュースやキャラメルがあるのか、と訊いたウルフを学校の先生は神様に対する冒?だといって廊下に立たせます。
 笑って、もちろんあるでしょうよ、と答えてなぜそう思ったの? と訊いてくれるような人だったらウルフもお姉ちゃんのことを話せたでしょうに──。
 スタルクはまわりの大人に理解されずそのことに慣れっこになってしまって、本当はわかってほしいんだ、という自分の気持ちもわからなくなっている子どもを、それでもけなげに必死で生きてる子どもを描くのです。(赤木かん子
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化安田夏菜