エミットとかあさんの歌

ラッセル・ホーバン/文 リリアン・ホーバン/絵
谷口由美子/訳 文研出版

           
         
         
         
         
         
         
    

 父さんが死んでしまってからというもの、かわうそのエミットと母さんは、とても貧しい暮らしをしています。
 エミットは父さんの残してくれた道具で大工を、母さんはたった一つ持っているかなだらいを使って、洗濯をして暮らしをたてているの。
 でも、あんまり貧しい暮らしが続くと、気持ちがすさんでくるでしょ?
で、クリスマスのときに歌のコンテストがあるってきいて、二人とも相手に内緒で出ることにして、エミットはかあさんのかなだらいに穴をあけてバンジョーにし、母さんはエミットの大工道具を売りっぱらってドレスを仕たてちゃったの。なにかいいこと、輝くことがひとつでもないと、もうやってけないってとこまで、二人とも追いつめられちゃってたから――。
 でもね、二人ともコンテストで敗退…・。だってすごくお金をかけたゴーカなロックバンドがいたんだもの。
 コンテストでバッタリ顔をあわせた二人は愕然とします。だってエミットは大工道具を、母さんはかなだらいを、失くしちゃったんだものね。せっかくのクリスマスだというのに―――。
 日本からビンボーというものが平均的に消えてしまったいま、こういう絶望感を経験したことがある人って、どれだけいるのかなとも思うけど、そういうものを全部のりこえて、いろいろあったあと、澄み切った心境にまで達するのよね。この二人は―――それもクリスマスの夜だからさ―。 
 凍った川、あたり一面のロウソクの輝きと、冷たい澄んだ夜空にひびきわたるクリスマス・キャロル……・・本当に絵に描いたような美しいクリスマス物語です。(赤木かん子

テキストファイル化土屋美知子