青いやなぎ

ドリス・ゲーツ作
田中とき子訳 偕成社

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 もうこの本を持ってる図書館は少ないでしょう。なにせこの本、書かれたのが一九四○年……で、四一年のニューべリー賞次点になってますから、もうかれこれ六十年も前の本てことになるものね。
 ても日本で訳されたのは一九八一年、と意外に新しく、といっても、すでに二十年近くたつわけですから、装幀はメチャ古いです。
 置いておくなら書庫か、レディースコーナーだな。
 ても内容は読んでびっくリ…。そんな古い本にもかかわらず、この本のストーリーは、農場経営に失敗して、テキサスからカリフォルニアまで渡りの労働者にならざるをえなかった父親に連れられて、十歳の女の子ジェニーが、つくづくとこんな生括はイヤだ、と思い、落ち着いて暮らせる自分たちの家が欲しい……と思う、というものなんだから。
 もちろん古い物語にだって悲惨な話はいっぱいあった……。
 そういうものと、近代的なこういう話のどこがそんなに違うの? と聞かれるとはっきリはいえないんだけど、タッチというか見方というか切リ口というか……もっとずっと社会を意識していてシビアなのよね。
 児童文学の歴史のなかではイギリスの『トムは真夜中の庭で』とかタウンゼントか労働者階級の子どもたち、今の問題を抱えた子どもたちを描いているということになってますが、その前からもアメリカにはチラホラそういう本があったのです。
 こういうことに興味のある大人の読者にはおもしろい本だと思います。
 新しい装幀で大人の本として出ないかな。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)