あとがき


           
         
         
         
         
         
         
     
これは去年(一九九七年)に出した『図書館員のカキノタネ かんこのミニミニヤング・アダルト入門パート1』につづく〃パート2〃-つまりヤング・アダルトで厚い本……のブックガイドです。
 みなさんとっくにご承知のように、今の日本では、児童文学という形(つまリは子どもでも読める……はず……)で出されたにもかかわらず、厚くて字の小さい本は、ほとんど子ども、ティーンエーンャーには読まれなくなってしまいました……。
 かわリに、私が仮にヤング・アダルトもの……と呼んでいるフィリパ・ピアスやマーヒーを読んでいるのは二十代、三十代、四十代以上……つまリは大人です。
 どういうわけか、大人になりきれずに苦しむ大人が急増したことで、子どもが成長する瞬間を描くことができる……ひいてはどうしたら大人になれるのか……という問いに答えを出せそうな児童文学という文学ジャンルが〃子どもたちのために〃とは別の方向から脚
光を浴びることになってしまったのです。
 まあ見方を変えれば昔から児童文学に潜んでいた……つまり本当はあったのだけれど認識されなかったテーマ(たとえばジェームズ・バリの『ピーター・パンとウェンディ』のように-)が浮上してはっきリ見えるようになっただけともいえるでしょう。

 とにかくそういうわけで、特にこの本に入れてあるような本は、いまや子どもが読むものではなく、大人が読むものに移行しつつあります。なかには一般……大人用の本として発表されたものを逆にこちら、児童文学ブックガイドのなかに引っ張ってきたものもありますが、それはそのテーマの児童文学を知識的にバックアップして理解しやすくさせてくれるもの、もしくはおそらく片方をおもしろがる読者ならば、もう片方もおもしろがってくれるだろうと思った本です。
 実際、小さい…三万冊以下の蔵書数の図書館でしたら、外国もののヤング・アダルトはラべルに〃Y〃の字だけ入れて、つまり(Y933-ア)という具合に目印だけつけて一般文学の棚に入れてしまったほうが、お客さんも読んでくれるし、本棚もしっくりおさまる可能性が高いでしょう。
 そうしてヤング・アダルトコーナーには去年紹介した〃パート1〃-薄くて字の大きなヤング・アダルトものを置くんです。
 ともあれ、これで〃図書館員のカキノタネ〃のシリーズはおしまいです。長いあいだ、どうもあリがとうございました。本当にあちらこちら、見える手にも見えない手にも支えていただきました。
 心から感謝申し上げます。
一九九八年 七月
赤木かん子