あとがき大全(68回目)

金原瑞人

           
         
         
         
         
         
         
    
1.このところ
 訳書は出ても、あとがきのついていないこともあったりして、先月ここをお休みしたというのに、数えてみると、『ミッドナイターズ3』しか、ここに載せるものがないのだった。
 これから今年中に出る予定の本は『ヒューゴー・カブレの不思議な発明』くらいかな。もし早ければ、『バージャック・ポー』も出るかも知れない。
 来月、12月末はちょっと趣向を変えて、今年みた映画の短評をまとめて載せてみようかなと思っている。

2.ともあれ、ひとつだけのあとがき
   訳者あとがき(『ミッドナイターズ3』)

 オクラホマ州ビクスビーでは、深夜十二時からの一時間、世界が青く染まり、人間は凍りついたように動かなくなる。この「ブルータイム」でも動けるのは、ミッドナイターと呼ばれる五人の若者だけだ。彼らはこれまで、この時間帯に現れる闇の怪物ダークリングと戦ってきた。
 ところが、この第三巻(Blue Moon)では、十二時から始まるはずの「ブルータイム」がいきなり、昼間生じてしまう! この不思議な現象はやがて終わるが、そのうちふたたび生じて……それと当時にダークリングたちが、それも太古のおそろしい連中までが異様に興奮しているらしい。
 やがてわかってきたのは、ブルータイムの亀裂が広がってきていること。そして、不思議な現象が起こるたびに、その亀裂が広がること。それだけでなく、その亀裂のなかでは、ブルータイムであっても、ふつうの人間も凍りつくことなくふつうに動いている……ということは、ダークリングの餌になってしまう。
 五人は、世界の終わりが恐るべき速度で近づいてくるのを感じ、必死にそれをくいとめようとする。
 しかし、これまでと同じで、五人の足並みはなかなかそろわない。そのなかで最も危険な存在がレックス。第二巻で、ダークリングと合体させられたレックスは、なんとかもとにもどるが、それ以来、ダークリングの闇の部分が心に居着いてしまう。レックスは、ときどき激しい衝動にかられてダークリングのようになってしまうのだ。その変化をだれもがおそれていたが、最もおそれていたのはレックス自身だ。
 レックスの昔からの親友メリッサ、「数字」と「数学」の天才少女デス、ブルータイムに空を飛ぶことが大好きで、ブルータイムが二十四時間続けばいいと思っているジョナサン、ブルータイム時にただひとり、強烈な「火」を使うことのできるジェシカ……四人はレックスを、世界を、そして自分たちを救うことができるのか。
 このシリーズは最初からクールでダークな雰囲気と、途方もない想像力に満ちていた。しかし最終巻が、これほどすさまじい物語になるとはだれも予想できなかったに違いない。まさにけたはずれにおもしろい「危険なファンタジー」!
 どうか、心ゆくまま楽しんでほしい。

 なお、第一巻、第二巻に引きつづき、大活躍のリテラルリンクのみなさん、原文とのつきあわせをしてくださった中田香さん、そしていくつかの質問にていねいに答えて下さった作者のウエスターフェルドさんに心からの感謝を!

         二〇〇七年十月一日           金原瑞人