スペイン児童文学の話(06)

「新刊児童書展示室だより」TRC 2000/08

長谷川晶子


           
         
         
         
         
         
         
         
         
    
 大人子どもを問わず、読書離れが進んでいるといわれている今日この頃ですが、売れる本は桁違いでヒットするものです。よい本はやはり売れる?よく見てみると、メディアが大々的に取り上げたり映像化されたりした作品がべス卜セラ−になることもしばしばあります。
 子どもの本の世界でもそうではないでしょうか。名作ではあるが、どちらかといえば地味な存在だったとある本が、ア二メ化されたとたん人気がでる。まあ、それはそれで、作品の面白さを世間に分ってもらえるからいいのかもしれません。原作のファンには癪にさわることもありますけど・・。
 さて、スべインでも同じようなことが起きています。力タルーニャ語のアニメーション「Les tres bessones(みつごのおんなのこ)は、メルセ・コンパニ(Merce Company)作、ルゼ・力プデビラ(Roser Capdevila)絵のシリーズが元になっています。この原作では、赤・青・緑の大きなリボンを髪に結んだテレサ・アナ・エレナのみつごちゃんが日常生活の中で出会う様々な冒険を描いています。数力国話に翻訳され、日本にも紹介されています(『みつごのおてんはむすめ』シリーズ、DEMPA/べンタン)。
 一方ア二メでは、ルセ・力プデビラがやはり絵を描いているキャラクター「La bnuixa avorrida(たいくつ魔女)」が加わっています。いつも「ああ、たいくつだー」とぼやいている魔女が、みつごに魔法をかけて名作の世界へと送り込んでしまいます。みつごは『ロミオとジュリエット』や『ドン・キホーテ』、あるいはコロンブスの世界に行って冒険を繰り広げます。このアニメーションはスペイン語にも訳されて国営第2放送でも放送されるようになりました。「みつごちゃんマドリードに行く!」と、バルセロナではちょっとしたニュースになったものです。また、アニメ版の絵本も出版され、CD、学用品、玩具、学習用CD‐ROM、シャンプー、歯磨き粉、香水等なども売り出されています。3ヵ国語で見られる公式サイ卜もあります。街を歩けぱ、みつごのシンボルである大きなリボンを髪に結んだ女の子たちを見かけるし、カルナバル(カーニバル)の時には、みつごちゃんに扮装したおばあちゃんたちもいたそうです。
 かくいう私も、テーマソングが流れると一緒に歌っちゃうのです。「Un,dos,tres,som tres bessonnes!(1,2,3、わたしたちはみつごよ!)」
 このようにかなり影響力のあるみつごの絵本ですが、これがきっかけとなって、子どもが本に親しむようにな
ればいいですね。