徳間のゴホン!第23回「ちいちゃい!」

徳間のゴホン!第23回「ちいちゃい!」
上村令

           
         
         
         
         
         
         
    
 子どもは大人より小さくて、いつも小さい小さいといわれているせいか、「自分よりさらに小さいもの」のお話が好きです。「自分より年が小さい」赤ちゃんにも興味津々だけれど、「自分よりサイズが小さい」小人やネズミが活躍するお話にも、目を輝かせる子が多いようです。今回は、そんな「サイズが小さいもの」が活躍するお話をご紹介しましょう。
『ねずみの家』の主人公の子ねずみボニーは、たくさんの兄弟の末っ子。一家は人間の家の地下室の、植木鉢の中で暮らしています。いつもぎゅうづめの植木鉢から押し出されてしまったボニーが、人間の家の上の階で見つけたのは、やっぱり小さな人形の家。でもそれはボニーにはぴったりの大きさで…? 植木鉢にぎゅうづめの小さなねずみたちの挿絵がとても可愛い一冊。
『るすばんジョージちいさくなる』の主人公ジョージは、朝起きたら小さくなっていました。両親は留守で、赤ちゃんの弟のお守りをすることになっていたのに、ジョージの背丈は弟の顔の大きさより小さいくらい。でもジョージは、おもちゃの飛行機や舟に乗ったり、おさじに腰かけたり、スポンジに乗ってすべったりしながら、追いかけてくるネコをかわし、弟の面倒をちゃんと見て、お皿洗いまでやってのけました! 小さくなると普段使っているものがどんなに大きく感じられるか、ぺージ毎にじっくり楽しめます。
『トニーノの歌う魔法』では、二人の子どもたちが悪い魔法をかけられて、人形サイズにされてしまいます。自分でも多少魔法が使える子どもたちが、「取り消しの魔法」をかけてみると…魔法は、ちょうど出てきた食事にかかってしまい、二人は人間サイズに巨大化した山盛りのスパゲティに押しつぶされそうになります。逃げ出して家の中を彷徨えば、人間の家具の足がまるで林のように見え、悪い魔法使いから逃がしてくれるという人に会ってポケットに入れてもらえば、その人が歩くたびにポケットが揺れること、揺れること。「小さくなったらどうなるか」ということがよくよく考えられていて、物語のおもしろさに加えて、そうしたディテールもたっぷり楽しめます。
 最後に、「小さい小さい」と言われ続けている子どもたちが、胸のすく思いを味わえる一冊。『ママちいさくなーれ!』は、タイトルどおり、「あれしなさい、これしなさい」とうるさいママを、小さくしてしまう男の子のお話。さんざんな目にあったママの感想は、「小さいってたいへんなのね」でした。

徳間書店「子どもの本だより」2002.5-6 より
テキストファイル化富田真珠子