コドモの切り札

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世界初!?のお祭絵本

甲木善久

           
         
         
         
         
         
         
    
 先週、先々週と当コラムで触れた内田麟太郎さんから、お手紙をいただいた。なんとタイミング良く、あの週に内田さんは九州で講演をなさり、郷里の大牟田に立ち寄られ、そこで当コラムのコピーをご覧になったというのである。う〜む、偶然というのは恐ろしい。
 さて、それはそれとして、いただいたお手紙に書かれていたもうひとつのお話がとても面白かったので、今週はそれについて書いてみたい。
 来年春の刊行予定で、『わらうだいじゃやま』という絵本を制作進行中なんだそうである。で、その作り方というのが何ともユニークなのだ!純正大牟田市民・手作りお祭り絵本、とでも表現したらいいだろうか?とにかく、大牟田市最大のお祭り「大蛇山祭」をモチーフに、文章はもちろん郷土の誇り日本一の絵本の作家である内田麟太郎、版元も地元福岡の石風社、デザイナーも福岡在住でご活躍中の毛利一枝さん。そして、特筆すべきは、大牟田のフツーの人たちが、その本の刊行自体をひとつのお祭りと見なし、ワッしょいワッしょい動かしてらっしゃるというのである。
 製作に必要な資金は、大牟田在住、もしくは、大牟田出身の方々から募り、絵本の表紙・裏表紙・両側の見返しに、お祭りのときの協賛金出資者名を連ねた提灯よろしく、ドッと載せてしまう。本人でも孫でも恋人でも、お店でも構わない。なんたって、お祭り絵本なんだから、いいのである。たぶん、こういう試みは世界初ではなかろうか?
 さて、肝心の絵は、伊藤秀男さん。内田さんにいわせると「縄文の香りのする絵」を描く作家である。この方は大牟田出身ではないのだが、確かに、祭りの持つ土俗的なエネルギーを表現するには彼の絵こそ抜群だと、僕も思う。このへんのシビアな見極めも、内田さんのプロの眼力である。
 絵本協賛金の問い合わせ先は、大牟田観光協会=電話0944(52)2212=まで。先着四百名までだそうです。
西日本新聞1998,032,22